前回のレポート「UD公園のヒント・海外編No.02-てっぺんに続くスロープ」の中で、複合遊具のスロープとプレイデッキの関係を、長方形の厚紙と積み重ねたマグネットを使った模型でご説明しました。今回は模型で言うとマグネットの方、プレイデッキの特徴をご紹介します!
上の写真は、ある複合遊具のプレイデッキです。あいにく全体が写っていませんが、床が多角形の形をした広いスペースです(たたみ4畳分近くあるでしょうか)。
プレイデッキは名前の通り遊びの要素を備えた場所ですが、スロープとスロープの中継地点として踊り場のような役割も持っています。
このようにデッキにゆとりがあると、車いすを利用する子どもも含めて複数の子どもや親子で一緒に遊べますし、その間を気兼ねなく通り抜けることもできますね。
ではプレイデッキ上の遊びには、どのようなものがあるのでしょうか。
プレイデッキは多角形ですからいくつもの壁面があります。それらの壁面を利用して、いろいろな遊び方のできるプレイパネルが備え付けられていました。
ボタンを押すと音が鳴るもの、砂時計&透明なオイルの中でキラキラとスパンコールが揺れるオイル時計(?どなたか正式な名前を…)、パネルにはめ込まれた円盤を回転させて迷路の中の鉄球を動かすゲーム、また地元で恐竜の化石が発掘されたことにちなんだ恐竜パズルも!
体を動かすだけでなく、見たり、聞いたり、考えたりと様々な感覚を使って楽しめる工夫が満載です。プレイパネルの一つひとつから、遊具メーカーの方の「操作がしやすく、壊れにくく、何より子どもたちの力を引き出す楽しい遊具を」という熱意が感じられます。
こちらは、半面は白、もう半面は茶色に塗られた高さ数センチの筒状のピースが縦5個×横15個、計75個並んだプレイパネルです。一つひとつのピースを回してどちらの面を出すか選んでいくと、パネル全体できれいな模様を描けたり、記号や文字を表すことだってできます。
集中してアルファベットをつづる子どももいますし、表面を勢いよく撫でてピースがクルクルと回る感覚や音を楽しむ子どももいて、遊び方はそれぞれです。
ところでこの横長のパネルは、子どもの肩くらいの高さに設置されていて、その下は空いていますね。
こちらのデッキには潜望鏡が付いたパネル(左)と、車のハンドルやギアが付いた運転席風のプレイパネル(右)が並んでいますが、やはり2つともパネルは上部だけ。床から高さ70cmくらいまでは壁がありません。また床がそれぞれ半円形にせり出していて、まるでパネルの向こうに手すり付きの小さなバルコニーがくっついたような形です。
これは車いすに乗った子どもがプレイパネルにしっかりと近付いて自然な姿勢で遊べるよう、足元の空間を確保するための工夫です。
じつはこの写真を撮った後、私が「なるほどぉ」と感心しながらハンドルを動かしていると、男の子が駆け寄ってきてひょいとパネルの下を潜り、反対側のバルコニーに立ちました。
「これね、こっちからも動かせるんだ。ほら!」とパネルの裏側からギアをガチャガチャと動かして見せてくれたのです。
「ほんとだっ」
「ね!すごいでしょ?」
車いすの子どものための工夫が、このように向かい合って遊ぶ楽しさを生むスペースにもなっていることに気付かされました。
さて、前回のレポートでも触れましたが、プレイデッキには他にも様々なチャレンジルートが接続しています。たとえばうんていやバランス遊具、はしごやウォールクライミングなどです。それらの出入口は多角形のデッキの、プレイパネルの設置面以外の壁に設けられています。
しかしデッキに上がってきた車いすの子どもが、これらの出入口から誤って落ちてしまう危険はないのでしょうか?
大丈夫です。そのような転落を防止するため、これらの開口部には車いすより狭い幅で手すりが設けられていたり、出入り口の手前は床が一段高くなっていたりします。
これで本人が遊びに夢中でついうっかりと、あるいは不意に他の子どもとぶつかったはずみで、車いすごと下に落ちてしまうという大きな危険(ハザード)は避けられます。
あらゆる人がアクセスできるようにすることと引き換えに生まれる新たな危険を回避するための工夫も、UD公園には欠かせません。
ここまでバウンドレスプレイグラウンドのプレイデッキの特徴を見てきました。
最後に、あるプレイデッキの写真をご覧下さい。
この複合遊具は3つのデッキを持っているのですが、こちらの写真は最初の一番低いデッキです。このささやかなプレイデッキが一体いくつの機能を持っているのか数えてみました。
・左手前の園路からこのデッキへ、緩やかなアーチ状の橋がつながっています(まず一つ)。
・右奥へスロープが延びて次のデッキへとつながっています(これで二つ)。
・さらに音を鳴らしたり回したりして遊ぶプレイパネルが3種類。
・はしごやロープを使って様々な手段で昇り降りする遊具が4種類。
・クルクルと回転しながら降りる遊具が一つ。
・滑り台が一つ。
・伝声管が1本。
なんと(床下のしかけは含めず)デッキの上だけで、遊び方も難易度も様々な11の機能を持っていました!
皆さんの身近な公園にある複合遊具のプレイデッキはいかがですか?
今回は、スロープを一つ上がるごとに、あらゆる子どもたちに様々なワクワク感を与えてくれる多機能なプレイデッキをご紹介しました。