Boundless Playgrounds(バウンドレス プレイグラウンド)は、コミュニティに子どもたちのための特別なプレイグラウンド(遊び場)を誕生させる運動を支援する団体です。健常児と障害児が一緒に遊べるように工夫を施し、子どもたちが遊びを通して学ぶ中で、「生きる」ために必要なスキルを発達させることのできる場所 – それがBoundless Playgroundsの提唱する「特別」なプレイグラウンドです。Boundless Playgroundsは、このような取り組みを支援する組織としては、米国初の全国的な非営利組織(NPO)です。米国では既に20を超える州にBoundlessプレイグラウンドが誕生しており、カナダも合わせると、その数は全部で100箇所を超えます。また、現在、さらに数十箇所がオープンに向けて準備段階に入っています。
Boundless Playgroundsはコネチカット州に拠点を置く組織で、熱い志を持った親と専門家たちのチームによって1997年に設立されました。
(以上、バウンドレス プレイグラウンドのホームページより 訳出:阿久根信之)
“Boundless”(バウンドレス)とは「制限がない、無限の」といった意味です。上に紹介したサイトは英文ですが、写真やビデオで様々な子どもたちの笑顔を見ることができます(「こぼれ話:どこへも行けないスロープ」、「こぼれ話:つくれば、やって来る(前編) 」もご参照下さい) 。
このNPOが携わってできた工夫いっぱいの公園をいくつか訪ねてきました。レポートではその遊び場や遊具の特徴を、ポイントごとにご紹介していきたいと思います。
今回は「砂遊び・水遊びエリア」です。
広い砂場の中に、出島のように突き出した屋根つきの一角。
この出島は、歩道からコンクリートの地面でつながっているため、車いすの子どももそのままアクセスすることができます。出島の周囲にはショベルカーを操作する感覚で砂を掘って遊べる遊具や、下の砂場からクレーンですくい上げた砂をためて遊べる砂場台、またその砂を下に流し落とすパイプなどがありますね。砂遊びの楽しい仕掛けが集約されているので、しぜんとここがみんなの遊びの拠点になるわけです。
こちらの公園でも砂場の中に砂場台が設けられています。
砂場の「隣に」ではなく「中に」というのがポイントです。友だちや兄弟姉妹と同じ場所で遊び、刺激し合ったり協力したりして楽しさを共有することは子どもたちにとって大切な経験です。
ちなみに砂場台が壁ではなく柱で支えられ足元に空間があるのは、車いすがすっぽりと入り、無理のない姿勢で遊べるようにするためです。砂場台の下も小さな子どものちょっとした遊び場になりそうですね。
砂場台の中をのぞいてみましょう。寄付されて誰でも自由に使えるおもちゃがいっぱいです。あらら、水が溜まっています。「さっき通り雨が降ったから?」いえ、違いました。誰かさんがバケツでせっせと水を運んできたようです。その子(たち)が砂と水で、自分だけの「陸」「海」「島」をつくって楽しく遊んだ跡でしょう。普通の砂場ではなかなかできない遊び方ですね。この砂場台は車いすを利用している子どもだけに貢献しているのではないのです。
こちらは複合遊具の下に設けられた水遊び台です。といってもここに蛇口が付いているわけではないので、やはり近くの水場から子どもがバケツで水を運んでくるようです。
ポイントは2つの水遊び台の高さが違うところです。兄弟で遊ぶ時、お兄ちゃんにはこの高さがちょうどいいけど、弟くんには高すぎる。車いすにはこの高さがぴったりだけど、立って遊ぶには少し低い。子どもたちがそれぞれ自分に合った方を選んで遊べるように、高さをずらして設置されています。
さて、課題と思われる部分にも触れておきましょう。
最初の2枚の砂場の写真を見ると、コンクリートの歩道と砂場の境に段差があります。もともとはほぼ同じ高さだったのですが、たくさんの子どもが遊んでいるうちにだんだんと砂が減っていき、ついに段差ができてしまいました。
車いすの子どもが操作を誤って、あるいは視覚に障害のある子どもが気付かずに歩道を踏み外してしまう可能性があります。またコンクリートの上にたくさんの砂が上がると滑りやすくもなります。砂場の縁を少し高くすると砂が外に出にくくなると同時に、歩道からの予期せぬ踏み外しを避けることができるのではないでしょうか。
今回は砂遊び・水遊びエリアについてご紹介しましたが、従来の公園では遊べなかった子どもたちのために工夫された遊具が、他の子どもにとっても新しい魅力を生んでいる事例を見て、「あ、そうか!」「なるほど!」と感心させられます。
これからも、いろいろな「なるほど!」をお伝えしていきますのでお楽しみに。