こぼれ話No.10 常識という箱の外側

 サイトを見て下さったアメリカ在住のあるお母さんから、公園の地表面について次のようなメールをいただきました。わかりやすい写真付きです!

 「こちら(アメリカ)の公園は、遊具があるエリアはウッドチップだったりタイヤを細かくしたものが敷き詰められていて、転んだり、遊具から落下しても怪我が最小限になるようにしてあります。いらなくなったタイヤの再利用としても、とても良い利用の仕方だと思います」 

写真:遊具の周り一面に敷き詰められたタイヤチップ。チップは大きいもので、一つが5×2センチほど

 「地面は少しフカフカとしているので歩行器でのアクセスは困難かも」という点をことわられた上で、「アメリカの公園、特に遊具の周辺ではこれらの表面材が広く活用されていて、遊具以外の場所は芝生が当たり前です」という情報でした。

 一方、日本では硬い土の地面が一般的で、「これが当たり前」と思っている人が多いのではないでしょうか。
 こちらの公園の設置者や遊び場の専門家の方たちに土の地面のメリットを伺うと、「費用が安い」「維持管理がしやすい」といった他に、「硬い地面の方が、『落ちると怪我をする』ということを子どもが学べるからよい」という点が挙げられることがあります。

 遊具事故の70~80%は遊具からの転落・落下に起因するそうです。実際に多くの子どもたちが、落ちて痛い目にあった経験から、前より注意深くなったり、もっとうまく遊ぶ方法を身につけたりしてきたでしょう。

 しかし情報を提供して下さった方のメールには、こんなコメントがありました。
 「私自身も、『落ちて怪我をして危険なことを学ぶ』と考えていたのですが、こちらに来て考えが変わりました」

 この女性の息子さんはアメリカでサッカーを習っておられ、練習中に何度も転ぶそうですが、グランドが芝のため擦り傷さえほとんどできないのだそうです。土のグランドが一般的な日本からすると贅沢でうらやましい話ですが、中には「子どもがスポーツで無傷なんてなんだか過保護」といった印象を抱く人もいるかもしれません。
 けれど、そこでの本来の目的は、子どもたちが思いっきり走り回りながらサッカーの技術を習得していくことであって、怪我を恐れない勇気や我慢強さを培うことがゴールではないはず・・・。

 では遊び場の目的は?

 遊びからリスクを学ぶことはもちろん大切です。
 しかしそのリスクが、身体や脳に大きな損傷を負う危険性をはらんでいる必要はあるのか?
 その危険が冒せず、発達障害のある子どもを公園で遊ばせることをためらうお母さんたちは果たして過保護なのか?
 「これが当たり前」の陰に見過ごされてきたユーザーやニーズはないのか?
 
 Think outside the box.

 私たちは時に思い切って、既成概念の枠から離れて考えてみる必要があります。
 物事には長所と短所があり100点満点の答えは簡単に見つからないとしても、「常識」という箱の外側にある、別の可能性や新しい解決法を探っていきたい。

 皆さんからのいろいろなご意見や情報をお待ちしています。

(今回、情報と写真を提供して下さった方、ありがとうございました!)