こぼれ話No.05 「つくれば、やって来る」(後編)

If you build it, they will come.
(それをつくれば、彼らはやって来る)

 『フィールド・オブ・ドリームス』という映画をご存知でしょうか。
アイオワで農業を営む・・・(この続きは、こぼれ話「つくれば、やって来る」(前編)をご覧下さい!)

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 アメリカのNPO「シェーンズ インスピレーション」は、カリフォルニア州に拠点を置き、誰もが利用できる遊び場(Universally Accessible Playground)づくりに関する幅広い活動を、国内外で展開している団体です。

 スタッフの方々にお話を伺っていたところ、突然
「ところで『フィールド・オブ・ドリームス』って映画を知ってる?」と聞かれました。
「トウモロコシ畑に野球場をつくる話ですね」と答えると、意外な言葉が返されたのです。
「そう。その映画に『つくれば、やって来る』ってセリフがあるんだけどね、誰もが利用できる遊び場と障害をもつ子どもたちについて、私たちはこう考えるんです」

If you build it, they will NOT come.
(それをつくっても、彼らはやって来ない)

 彼らの言い分はこうです。
「第一の理由として、障害をもつ子どもやその家族たちは、『アクセシブルな遊び場』という言葉を信用できなくなってしまっているんです。こうした触れ込みの遊び場は増えていますが、実際に行ってみると、がっかりするようなスロープが一本あるだけだったり、障害のある子どもがみんなと一緒に遊べるわけではなかったりと、今まで期待を裏切られることがあまりに多かったからです」

 日本ではどうだろう・・・そもそも車いすに乗っている子どもの中で、「ここなら私も遊べるかも!」と公園に期待を抱いたことのある子どもが、いったいどれほどいるだろう・・・
 言葉が出ませんでした。

「ユニバーサルな公園をつくれば彼らが来るわけではない、という第二の理由は、子どもたちをそこに連れて行くこと自体に困難が伴うケースです。車いすや歩行器、その他の準備物・・・。身軽に公園に行ける子どもばかりではないし、自家用車を持たない一家もいます。
 私たちは公園をつくるだけでなく、例えば公園前に停まる路線バスをリフト付きにしてもらうなど、近隣の公共交通機関の整備を働きかけたり、公園でプレイイベントのある日には無料の送迎バスを出したりして、できるだけ多くの人が遊び場を利用する機会を得られるよう努めています」

「真のユニバーサルな遊び場をつくること、それは第1歩にすぎません。
 さらに大切なのは、実際に、多様な人々にそこを利用してもらうことなんです」

If you build it, they will NOT come.
(それをつくっても、彼らはやって来ない)

 彼らは胸を張ってこう続けます。
「決して、『つくっても無駄だ』と言っているのではありません。
せっかくの公園を活かすために、他にもできることがあるという意味です。
実際に私たちの公園を訪れた人々は、すぐにその素晴らしさを理解してくれます。(障害がある人もない人もね!)
 そして往復に数時間かかけてでも、繰り返しここに通ってくれるようになるのですから」

「シェーンズ インスピレーション」 「バウンドレス プレイグラウンド」
彼らは1つ、また1つと、本当の意味でユニバーサルな公園をつくり続けています。

 そして彼らのつくった公園には、今日もたくさんの子どもたちがやって来ています。