公園のユニバーサルデザインの開発にも有用と思われる実践手法を2つご紹介します。何れも日本人間工学会アーゴデザイン部会で、私もワーキンググループのメンバーとして研究・開発したデザイン手法です。
「ビジョン提案型デザイン手法」は、書籍「エクスペリエンス・ビジョン: ユーザーを見つめてうれしい体験を企画するビジョン提案型デザイン手法」(丸善出版 2012年)で提案しているもので、これまでにない新たな製品やサービスを発想するための提案型のデザイン手法です。
そのフレームワークと考え方を表したのが図1で、公園づくりに当てはめて説明すると、公園の利用者のニーズの深層(ユーザーの本質的要求)と、公園を設置する自治体や企業などの方針(ビジネスの提供方針)から、公園が提供する価値(バリューシナリオ)を考え、その価値を具体的な利用者(ペルソナ:公園の利用者像を精緻に設定したもの)が、どのような活動を通して手に入れるのか(アクティビティシナリオ)、そしてその活動はどのような遊具や環境をどのように利用して実現できるのか(インタラクションシナリオ)と3段階のシナリオを使って考えて、公園のハードやソフトに求められるアイデアとその仕様を導き出していきます。
参考までに、ユニバーサルデザインの公園づくりにビジョン提案型デザイン手法を応用するための簡単なフレームを作ってみました(図2)。ペルソナとして仮想の遊一緒(ゆう かずお)ちゃんを定義して、一緒(かずお)ちゃんがバリューシナリオで定義した価値を手に入れるための活動やインタラクションを考え公園のハード/ソフトのアイデアを出していきます。ペルソナを別のニーズを持つ子どもに変えれば、また異なったアクティビティとインタラクションが発想され、新たなアイデアが出てきます。ペルソナ一人ひとりの公園の利用体験シナリオを、ペルソナの目標と多様なニーズに合わせてきめ細やかに検討していくのです。これらを総合して、ユニバーサルデザインの公園を利用する体験とそのためのアイデアをまとめていくことができます。
もう一つは、「UDマトリックス」という手法で、書籍「ユニバーサルデザイン実践ガイドライン」(共立出版 2004年)の中で提案しています。これは、現状の問題を利用者の要求に合うように解決していく問題解決型のデザイン手法です。具体的にはユーザー(公園の利用者)とタスク(公園ですることを時系列に並べたもの)のマトリックスを使って、個々の利用者にどのような場面でどのような不便さやニーズがあるのかを細かく調べて改善策を考えます。この手法を使って、既存の公園の施設や遊具、プログラムなどを一人ひとりのアクセシビリティのニーズに合ったものに改善するためのアイデアを発想することができます。
両手法ともに、ワークショップなどのグループワークで行うと発想が広がり効果的です。詳細は、上記書籍だけでなく日本人間工学会アーゴデザイン部会のホームページからも得ることができます。UDマトリックスのテンプレートや事例もダウンロードできるようになっています。
みーんなの公園プロジェクトでも、このような手法を用いて公園のユニバーサルデザインの問題解決や新たなアイデアの発想をしていきたいと考えています。