UD公園のヒント<国内編>
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「UD公園のヒント・国内編No.10」
様々な挑戦、いろいろな発見(前編)
~兵庫県淡路市「淡路島 国営明石海峡公園」~

 本州から淡路島へ―― 明石海峡大橋を渡ってすぐのインターチェンジに程近い場所に、美しい海を臨む国営公園があります。

  写真:ポプラの木々が立ち並ぶ丘から見下ろした景色。芝生の上に模様を描くように植えられた花々   写真:小高い場所から見渡す庭園。中央を水路が流れ、周囲には手入れの生き届いた植物。向こうに海が見える
 国営明石海峡公園は、ここ淡路地区と本州側にある神戸地区の2つの公園からなり、淡路地区の公園は2002年に開園しました。(神戸地区は2012年頃の開園に向けて整備中です)
 もともとこの場所は、大阪湾の埋め立てなどに用いられた土砂の大規模な採取場だったそうです。かつての里山が大きく削られた土取り跡地は、その後、自然の回復と人の交流をテーマに県と国が連携し、一帯が整備されてきました。

 この国営公園の施設や園路では、バリアフリーやユニバーサルデザインの考えに基づいた様々な工夫が施され、遊び場では2004年に、車いすに乗る人も利用できる大型複合遊具を備えた「夢っこランド」がオープンしています。先駆的な挑戦の数々からは、きっといろいろな発見ができるはず!
 今回は、遊び場「夢っこランド」を中心に、淡路島の明石海峡公園をご紹介していきます。
(お断り:写真によって芝の色が異なるのは、撮影した季節が違うためです。レポートは、数回にわたって訪れた公園の様子をまとめてお届けします。)
写真:夢っこランドの遠景。大きな複合遊具や遊び場。ベンチのまわりでは家族づれがくつろぐ
 「夢っこランド」は、「風」・「花」・「水」の3つのエリアで構成されています。
 まずは「風エリア」からスタートしましょう!
 写真:芝の上を蛇行して延びる高さ120センチほどの壁。黄色やピンクなど数列あり、端にはソーラーパネルの付いた高い柱   写真:壁に取り付けられた幅180センチほどのパネルとその前に立つ女の子。パネルに描かれた8つの花にはそれぞれドレミファソラシドの文字と、その上に「花のうえに手をのせると音が出るよ!」の説明
 緩やかな芝生の斜面にカラフルな壁がクネクネと延び、それらの間にはネット遊具などが点在しています。壁の端にある高い柱にはソーラーパネルと小さな風車が付いていますね。

 手前の壁に、8つの花の絵の中にドレミの音階が書かれたパネルがあります。パネルに駆け寄った女の子が花の絵を手で押さえると、「ポーン」と大きな電子音が響きました!
 花の真ん中にはいくつかの小さな穴があり、光を発しています。ここがセンサーになっていて、光を遮ることでそれぞれの音が鳴る仕組みでした。隣のソーラーパネルはその電力供給に一役買っているようです。

 センサーは車いすからも比較的手が届きやすい高さにありますし、壁の近くに手をかざすだけでも音が出るため、操作に力は不要です。また花(音階)は、ピアノの鍵盤のような横一列ではなくWの形に並んでいるので、腕や体を上下左右に動かして音を鳴らす楽しさがあります。
 しかしこの配置、視覚に障害がある子どもにとっては複雑なのではないでしょうか?
写真:ドレミのパネル。花はアルファベットのWの形に並んでいる  写真:ファの花の上に手をかざしたところ。パネルには5つの小さな穴が空き、緑の光が見える
 そこで真ん中にある「ソ」の花の前で目を閉じて、手で探りながら順番に音を鳴らしてみると・・・むしろ分かりやすい!
 「低いド」は遠くの左上、「ファ」は近くの左、「高いド」は遠くの右・・・ 自分からの「距離」と「角度」の両方で位置を覚えられる上、「この辺かな?」と手で探っても隣の音と押し間違えることが少ないのです。ゆっくりと楽しくメロディを奏でることができました。
 ちなみにこのパネルは、ツルっとした平坦な壁にセンサーの穴だけが開いている状態ですが、例えば花の輪郭が凸ラインになっていると、さらに音を探しやすくなるかもしれません。
写真:いくつかのプレイパネルが並んだ一角。下は芝生だがパネルの前は砂地で窪んでいる 写真:パネルの前に近づく車いす
 こちらはプレイパネルです。
 鏡や、円盤を回して迷路の中の玉を動かす仕掛けなどが並んでいます(左の写真)。
 芝生の中にあるこの遊び場は、園路からもフラットでアクセスができるのですが、プレイパネル前の地面は芝がなく、窪んだ砂地の状態ですね。
 実際に車いすで接近してみると、前輪(キャスター)が砂に埋もれたり、窪みで車いすが斜めに傾くことにより片側の後輪(駆動輪)が浮いて空回りしたりして、身動きが取りにくいことが分かりました(右の写真)。

 景観を美しくし、小さな子どもにも安全で、地表面が高温になるのも防いでくれる芝生。ただ、地面が凸凹と歪んでいる場合や、芝がはがれている、あるいは芝が深すぎる場合も、車いすで走行するには力が必要となります。
 しかし、この遊び場でこんなものを見つけました。
写真:地面に敷かれた芝の保護マットの上を行く車いす
 先ほどのドレミのパネルの前など、使用頻度の高い場所で芝生が傷んでなくなってしまうのを防ぐために敷かれた、網目状のゴム製マットです。この保護マットがあると、芝がはがれて砂地になってしまうことも、地面に極端な凹凸ができることも少ないようです。また突起にはグリップ力もあるので、比較的楽に車いすをこぐことができました。
 このマット、芝生と車いすの共存を図るひとつのアイテムになるかも?!しれません。
写真:テーブルの高さに作られた半円形の砂場。直線の部分の壁には蹴込みスペースがあり、車いすがアクセスしやすい。下は芝生    写真:弧の部分を回り込むようにカーブして付けられたスロープ。上った先には車いすの座面と同じ高さの移乗スペースがある  
 こちらの砂場は変わった形をしていますね。
 車いすのままテーブルのような高さで遊べたり、半円形の砂場を回り込むようにして上ったスロープの先で車いすから移乗して砂場に入ったりできる、とってもユニークなデザインです。
写真:芝生の中にある楕円形の砂場。砂場の中央には黄色のカメ」
 こちらは、少し離れたところにあるもうひとつの砂場です。
 砂場を囲む縁は低く、中央にはカメの形をした島がありますね。遊びの幅を広げてくれそうな楽しい存在です。カメの表面はウレタンでカバーされていてクッション性があるので、子どもが転んでぶつかっても安全です。またカメの側面(立ち上がり部分)は、幼い子どもや体のバランスを保つことが難しい子どもが背もたれ代わりにして座り、砂遊びを楽しむのにも役立ちそうです。

 続いてご紹介するのは、「風エリア」のメインである大型複合遊具です。

 高いとんがり屋根の上では、いろいろな形の風車がゆっくりと回っています。海沿いにあるこの公園では、こうして風が吹くことが多いそうです。
 複合遊具の各デッキからはたくさんの滑り台が延び、ネットやロープ、階段と様々な登り方ができるルートがあって、子どもたちをワクワクさせてくれる遊び場です。
 写真:複合遊具。手前にはアルファベットのVの字のようにカーブして延びるスロープ   写真:円形の2階デッキに向けて周囲を回り込むように伸びるスロープ  
 複合遊具の手前に、カーブした長いスロープがありますね。傾斜はそれほど急ではなく、車いすどうしが余裕をもってすれ違える幅があります。
 ただこのスロープは、途中にひとつの踊り場をはさんで、2階デッキ(高さ2メートル30センチ)までほぼ連続した状態でカーブしながら続く上り坂です。
 写真:下りの向きで見たスロープ。カーブの外側の柵の途中に、幅1メートル以上の開口部     写真:踊り場から見下ろすスロープ。Vの字のカーブ周辺は両脇に簡素な手すりのみ
 「上りっぱなし」ということは、逆から来ると「下りっぱなし」になるわけで、カーブの途中には広い開口部(柵がない部分。ネット遊具のアクセスポイント)もあります。
 車いすに乗る子どもはこの下り坂を、出すぎるスピードを調整しながら、自分が開口部から落ちたり、あるいは他の子どもや柵にぶつかったりしないよう、慎重に下る必要があります。(ある意味、「かなりスリリングな滑り台」?!) あらゆる子どもが安心してのびのびと遊べるようにするためには、通路であるスロープの長さ、向き、踊り場の設け方などが大きな鍵になると思われます。

 ここでちょっと、開口部に注目してみましょう。
 先ほどのスロープ途中にある開口部は、広くてガードがないので危なっかしいのですが、この遊び場には他に、子どもがデッキや通路から不意に転落するのを防ぐのに役立つ、様々なタイプの開口部があります。柵の幅を狭くしたり、床から一段高いところにバーの付いた柵を設けたり、目立つよう床に黄色いラインを敷いたり・・・。
写真:急傾斜のクライミング遊具への開口部。車いすが通らない幅の柵がある  写真:ネット遊具への開口部。柵の一部として、ネットが取り付けられたバーが床から10センチほどの高さに渡されている
写真:滑り台への開口部。子どもがちゃんと座って滑るようにスタート地点にゲートが設けられているが、転落防止にもなる  写真:階段を数段下りた先に遊具がある開口部。デッキも階段も同色で同素材だが、注意喚起のため開口部の床の縁に黄色のラインが敷かれている
 「あれはどうかな?」「この方法は有効そう」「ここがあと○㎝狭ければ!」
 ひとつの遊び場でいろいろな工夫の仕方を実際に見ることができ、たくさんの発見がありました。
写真:2階デッキ。中央には、さらに上へ上がるためのらせん階段やチューブ状の遊具      写真:スタート地点が床から50センチほどの高さに上げられた滑り台。車いすからアクセスする学生さん
 さて、スロープを上った先には広い2階デッキがあり、様々なネット遊具や滑り台が・・・。また車いすから移乗しやすいよう、スタート地点を高くしたローラー滑り台もありました!
 階段やはしごを上れる子どもたちは、さらに上の3階、4階デッキへと駆け上がって行きます。一部の子どもが頂上からの壮大な景色を眺められないのが残念ですが、車いすでアクセスできるのはここだけではありません。2階のデッキは、この「風エリア」から「花エリア」へとまだまだつながっていました。
写真:複合遊具の2階から何度か向きを変えながら延びる長い回廊。両側は密なメッシュ状の白い壁。回廊を歩く大人たちは壁の上から周囲を見渡したり遠くを指さしたりしている    写真:100センチほどの高さから見た回廊。外の景色はほとんど見えない。壁には2段手すりと、その下にカラフルな円窓などが並ぶ 
 こちらが2つのエリアをつなぐ空中回廊。 途中には花の形をした伝声管があったり、壁の下にはカラフルな半透明の円窓や、軸で中心が固定されたボールをクルクル回して遊べる仕掛けが並んでいます。

 右の写真は、子どもや車いすの視点で見た景色です。
 回廊は、正面に見える曲がり角に向けてわずかな下り坂になっています。快適な通路を走って、あるいは車いすでスーッと駆け下りたいところですが、向こうからも誰か走って来ているかもしれません! 曲がり角の部分だけでも見通しがきくと安心できそうです。
 写真:回廊の途中に、花の形をした大きな円形の屋根。その下は少し広いデッキがある。その向こうにかまぼこ型の建物が見える    写真:デッキから延びるトンネル型の滑り台。男の子たちが滑ろうとしている
 角を曲がると大きな花の屋根がついたデッキがあり、そこからチューブ型の滑り台が滑れるようになっていました。さらに先には、屋根付きで全天候型の遊び場が見えます。あの中にはいったいどんな遊具があるのでしょう・・・。

 先を急ごうとしたその時、回廊の床に思いがけない模様が浮かび上がりました。
写真:回廊の木の床の上に並んで映る、黄色や赤の大きな花模様
 薄雲を抜けて南西に傾いた太陽の光が、回廊の壁に並んだ色付きの窓に差し込み、床の上に黄色や赤の大きな花模様を映し出したのです!

  突如、虹のように現れたお花畑に気持ちもはずみますが、今回のレポートはここまで!
 遊び場や公園内に設けられた様々な工夫の続きは、次回「UD公園のヒントNo.11」でご紹介します。どうぞお楽しみに。


(この公園の取材には、倉敷芸術科学大学でデザインを学ぶ学生さんたちも同行してくれました。それぞれの視点で公園を巡り、新たな発見に貢献してくれた皆さん、ご協力ありがとうございました!)
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