UD公園のヒント<国内編>
前のページへ戻る
「UD公園のヒント・国内編No.04」
先輩UD公園からの問いかけ(後編)
~鳥取県米子市「弓ヶ浜公園」~

 ユニバーサルデザイン(UD)という言葉がまだ一般的ではなかった1998年に、障害の有無に関わらず「みんながともに遊ぶ」ことをコンセプトに作られた、弓ヶ浜公園「みんなの遊具広場」をご紹介します。
 この遊具広場を計画する段階で、保育園や幼稚園、小学校、特別支援学校(当時の養護学校)の関係者と保護者への聞き取りや、地域の子どもたちを対象にした遊びのワークショップが行われ、そこから得られた住民の意見が遊具作りにも反映されたそうです。(「みんなの遊具広場」は平成11年度、国土交通省(当時の建設省)より「手づくり郷土賞」を受賞しています。)

 それでは、この遊具広場に施されたUDの工夫を探していきましょう!

写真:遊び場の案内板
 「みんなの遊具広場」の案内板です。ここが障害児も遊べるように工夫して作られたことについては、特に触れられていません。ただ、イラスト風の地図に描き込まれた子どもたちをよく見ると、そのうちの数人が車いすに乗っていることが分かります。このさりげない看板は、子どもたちを「障害児」「健常児」と分けることなく、ここが「みんな」のためのUDの遊び場であることを象徴しています。

 公園の場所が日本海のすぐそばということにちなんで、遊び場や遊具はそれぞれ「海」「船」「島」などに見立てられています。そして遊具には「くねくねゴッツン船室」(迷路)や、「ふわふわ島」(表面にクッション性がある丘のような遊び場)など、擬態語を含んだ名前が多く付けられていました。これは視覚障害児や知的障害児も含め、子どもたちが遊具の特性を認識しやすいようにとの配慮だそうです。
写真:車いすスペースのある砂場
 ここの砂場は段々畑のように、2段階の異なる高さの砂場を組み合わせて作られています。写真は、高い段の砂場を裏側から写したものですが、砂場の土台であるコンクリートの壁に3つの四角い空間がありますね。車いすでここにアクセスすると四角いスペースにちょうど膝下が入り、テーブルのような高さで砂遊びをすることができます。

 ここは車いすを使っている子どもはもちろん、高い段の砂場に上がった子どもと一緒に遊ぶ車いすのお母さんも想定して作られており、段々畑状の砂場が子どもにとって階段の役割も果たしていることに「なるほど」と納得です。また砂場を高くするとそこは「野良猫たちのトイレ」になりにくく、衛生上の問題解決にも有効とのことです。
写真:ブランコエリア
 こちらはブランコエリアです。立ってこげる「一般的な板ブランコ」(鎖部分は指を挟まないように、ビニールでカバーがされています)、座板が軽くて柔らかくぶつかってもけがをしにくい「ゴム製の板ブランコ」、丸い籠(カゴ)のような形をしているので座位の不安定な幼児も転落しにくい「バスケット型ブランコ」の3種類から、好きなものを選んで遊ぶことができます。

 ブランコエリアの下には、たっぷりと砂が敷き詰められています。この砂浜のような地面は、海や島をイメージした遊び場の雰囲気にぴったりですし、子どもがブランコから転落した時に衝撃を吸収する役割もあります。

 弱点としては、車いすでこのエリアに乗り入れると、タイヤが砂に沈み込んで一人では抜け出せなくなってしまう場合があることと、他のエリアの地面(写真で言うと青いブロック敷きの部分)にもたくさんの砂が上がってしまうことです。こうした固い地面に砂が上がると滑りやすくなるので、公園の管理をされている方が、定期的に砂を掃き戻しておられるそうです。
写真:巨大な複合遊具
 こちらが船をイメージして作られたメインの複合遊具です。木製のたいへん大きなもので、1階は迷路になっており、2階部分のデッキには小さな丘の上からまっすぐに延びる長いスロープ(写真中央)のほか、階段やはしごを使ってアプローチできます。さらに最後の坂を登ると3階部分の頂上デッキに行くことができます。
 さあ、この複合遊具にはどんな工夫がされているのでしょうか?
写真:迷路の入り口 写真:はしごの降り口
 左の写真は1階の迷路の入口です。迷路の通路は車いすのまま通れるよう幅があり、壁には小さなのぞき窓がいくつも開いています。これらの窓は遊びに楽しさを加えるだけでなく、壁の高さより背の低い子どもや車いすの子ども、また他の子どもの足音に気付きにくい聴覚障害の子どもを含め、子どもどうしの出会い頭の衝突を減らす助けにもなりそうです。
 
 右の写真は、2階のデッキから1階の迷路へとつながるはしごの降り口です。デッキの木の床には金属の円い突起が、点状の点字ブロックのように並んでいます(左の写真の迷路の入り口にも同じ工夫がしてありますね)。きっと視覚障害の子どもを含めたみんなに、「ここが出入り口だよ」とか「転落注意(または頭上注意)」と知らせるための配慮でしょう。
写真:伝声管のあるデッキ 写真:デッキの操舵席
 こちらは最上階、3階部分のデッキです。ここには伝声管や滑り台があって、車いすのまま一部の伝声管を使うことができ、船の操舵席を模した一角の隣からは遊具広場のほぼ全体を見渡すことができます。ただ、柱などのために車いすでは通れないところもあるので、もう少しデッキにゆとりがあり、遊びの要素が多いと、より楽しい場所になりそうです。

 ところで車いすに乗っている子どもがこの最上階に到達するまでには、以下の2つの「協力ポイント」を通る必要があります。

写真:スロープ途中の吊橋 写真:デッキに通じる急な坂
 2階のデッキに通じる長いスロープの途中には、床が小さな吊橋のようになってくぼんでいる箇所があります(左の写真)。上から見ると「どこから吊橋か見分けがつきにくい」点と、「その境界部分に6~8㎝の隙間ができている」点が気になりますが、吊橋自体はそれほど揺れるわけではありませんし、くぼみの深さも最大で10数センチなので車いすでも何とか通れそうにも見えますが・・・無理でした。
 
 車いすのタイヤがくぼみから抜け出すには、吊橋の端の部分の傾斜が急になりすぎることと、そこで懸命にこいでもタイヤがスリップすることが原因で、自分ではここから前にも後ろにも出られません。そこで誰かの助けが必要です。

 もう1箇所は3階のデッキに通じる最後の坂です(右の写真)。距離は短いのですが勾配が約35%あるので、車いすスポーツ選手であっても一人で上がることは困難です。ここが2つ目の協力ポイントです。

 

 この2つのポイントは、誰かの手助けがあれば車いすでもクリアできる関門です。急な坂を後ろ向きに下る時だけは、安全のため慎重な介助が必要ですが、そのほかは子どもどうしの助け合いでも乗り越えることができるでしょう。こうしたことをきっかけに関わりが深まるという「良さ」もあるかもしれません。

 しかし一方で、普段は車いすで自由自在に駆け回っている活発な子どもまで含めて、「車いす」である限り誰かの助けを借りなければ利用できない遊具というのは、やはり残念な気がします。友だちとの協力ルートだけでなく、車いす利用者が一人でアクセスできるルートが設けられていたなら、さらに多くの子どもが誰にも遠慮せず自分の力を発揮しながら、充実感をもって遊べるのではないでしょうか。


 ところで「協力」は、この遊び場の重要なキーワードの一つになっています。開園当初は、障害児を含めた多様な子どもたちが「協力」して遊ぶことを促すための遊具やしかけが設置されていました。しかし特別な意図をもって作られたこれらの遊具のいくつかは、想定外の遊び方をされたことなどが原因で、ほどなく故障したり利用できなくなったりしたそうです。

 これはUD公園が実際に様々な人たちに利用される中で、当初作り手側が予想していなかった課題が浮かび上がってきた一例ですが、反対に思わぬ効果が明らかになったり意外な利用者から重宝されているといったケースもあるでしょう。
 こうしたことを、今後のUD公園のさらなる「改良」につなげていくにはどうすればよいのでしょうか?

  この公園に施された工夫の数々は、完成形のお手本としてではなく、創意と熱意にあふれる作り手からの提案という形で、すべての人に投げかけられているのだと思います。
  こうした提案に対して、実際の利用者である多様な子どもたちや大人たちが、感想や意見をたくさんフィードバックしていくことが大切です。
  「改良」の鍵を握っているのは作り手と使い手のそれぞれで、両者の鍵がそろって初めてUDはより確かな次の扉を開くことができるのではないでしょうか。

 先輩UD公園からの問いかけは、今も続いています。

 「こんな工夫をしてみたけど、実際の使い勝手はどう?」

 皆さんのご意見はいかがですか?

前のページへ戻る