UD公園のヒント<海外編>
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「UD公園のヒント・海外編No.16」
公園訪問in ニューヨーク・アメリカ
~ハイライン、イマジネーション・プレイグラウンド、アッサー・レビー・プレイグラウンド~

 

 米国ニューヨーク、マンハッタンにある3つの公園を視察しましたのでご紹介します。1つ目は、廃線となった高架鉄道を花と緑がいっぱいの遊歩道に変身させた公園。2つ目は、 子どもたちの創造的な遊びのための施設や遊具の新たな潮流を示唆する公園。3つ目は、1990 年のADA(Americans with Disabilities Act:障害を持つアメリカ人法)制定直後に作られ たアクセシブルな公園の今の様子です。

■ハイライン(High Line)

高架橋を緑道公園にしたハイラインの写真。野趣溢れる様々な花が咲く小道を多くの人々が歩いている。
 ダウンタウン西側の倉庫街を走る1930 年代に建設された高架貨物線。1980 年代に廃線となり、取り壊しの要望も起こっていたその高架橋が、別ウィンドウで開きます「ハイライン」という名前の公園となって蘇りました。これは、歴史的な高架橋を残すためにNPO 団体が中心となった市民参加型のまちづくりプロジェクトによるものです。2004年には再開発デザインコンペが行われています。高架橋を公園にするというアイデアは、パリのプロムナード・プランテ(植物の散歩道)に着想を得ており、2009 年6 月に第1区間が完成、2011 年6 月には第2区間が完成しました。
 倉庫街で、またアーティストたちの街としても知られるこのチェルシー地区は、一般の観光客が訪れることは少ない地域でしたが、このハイラインの完成によって、NY でぜひ訪れたい観光ポイントの一つにもなっています。

高架橋を緑道公園にしたハイラインの写真。野趣溢れる様々な花が咲く小道を多くの人々が歩いている。
 ハイラインの特徴を一言で言えば、名前の通り「空中緑道公園」。100 種類以上の多様な草 花や低木が自生のような趣で植えられた幅10数mの歩道が約1.6km に渡って続いています。 第1期にオープンしたところでは、林のようになっているところもあります。遊歩道の途中には展望台もあり、高所からの眺めをゆったりと楽しむことができます。部分的に鉄道のレ ールが残されており、この場所の歴史に想いを馳せる仕掛けになっています。さらにアート作品も配置され、ソフト面では子ども、市民向けプログラムも充実しています。

ハイラインの歩道脇にある施設の写真2枚。エレベーターと階段のある写真と、トイレの写真。
 アクセシビリティ面では、勿論ADA に準拠しており、アクセシブルなトイレやエレベーターなどが整備されています。歩道は小石を混ぜたコンクリート製で、車いすやベビーカーでも苦労はありません。淵は数cm 高くなっていて脱輪を防止しています。また、ベンチも各所に設置されており、歩き疲れたらどこでも休憩ができます。

ハイラインの歩道脇にある施設の写真2枚。エレベーターと階段のある写真と、トイレの写真。

ハイラインの歩道沿いにあるベンチの写真2枚。1枚は長さ2メートル程度、もう1枚は20メートル程度の長いベンチ。どちらも木製。
  一つ気になったのは、歩道と植栽との境界の処理です。境界をはっきりと分けるのではなく、境界部分のコンクリートにスリットを入れて土を入れ、コンクリートから次第に植栽に移り変わるようなしかけのデザインの意図は素敵なものですが、境界があいまいなため、脱輪防止のために高くなった淵に躓く人を何度も見かけました。そのためか、このような処理の境界部分に近づけないようにロープを張った所もありました。

ハイラインの歩道の淵付近の写真3枚。1枚は歩道の端が高くなっている部分、残り2枚は歩道と茂みとの境界部分で、その1枚にはロープが張られている。
 花と緑が溢れる地上10m 程度の高所を歩くのはとても気持ちが良く、近隣の人々がちょっと散歩をするにもとても魅力的な公園です。商業施設などに再「開発」されてもおかしくないものを、公園をつくるという素晴らしい選択をしたことに喝采です。そしてこのプロジェクトは、公園が地域の魅力作りの中核にもなることも証明しています。ハイラインは大きな 再開発プロジェクトですが、もっと小規模な所でも、都市の再開発の方向性として、「公園」 には大きな可能性があると思われます。

ハイラインの歩道の写真3枚。身長の2~3倍程度の高さの林の中の歩道を歩く人々、歩道脇の木製のサンデッキに寝そべる人々や、歩道の幅の半分に水が流れる場所を気持ちよさそうに裸足で歩く人。



■イマジネーション・プレイグラウンド(Imagination Playground)

 2010 年7月にダウンタウン東側にオープンしたこの公園は、ニューヨーク市公園レクリエ ーション局とデザイン会社のロックウェルグループによって計画されました。イーストリバ ーに近く、すぐ傍にはサウス・ストリート・シーポート(19 世紀に栄えた港を再開発によっ てショッピングモールや博物館に生まれ変わらせたエリア)もあることから、公園全体が船のようなトラック型をしており、さらにウッドデッキや水場、砂場、ロープ、滑車、伝声管など海や船のモチーフが使われています。

イマジネーション・プレイグラウンドを外から見た全景写真2枚。公園は木板と鉄格子のフェンスで囲まれており、公園内に10本程度の大きなパラソルがある。公園の後ろには高層ビルや帆船のマスト。

 公園は、中央のウッドデッキとそれを挟む水場と砂場の3つのエリアから成り、さらに滑り台へのルートにもなる大きなスロープの空中通路やトイレの建物の屋上を利用した見晴らし台(残念ながら昇降は階段のみ)などがあります。地面は全体がウッドデッキを基本として、高低差がある箇所はうねるような傾斜で繋がるアクセシブルなものになっています。さらにベンチや日避けのパラソルも数多く設置してあり、子どもたちを見守る親や祖父母、ベ ビーシッターたちにとっても居心地のいい場所です。

イマジネーション・プレイグラウンドの内部の全景写真。地面は木製で手前に深さ10センチ程度の浅い水場がある。青色のウレタンフォームの遊具が園内に散らばっている。全体で20~30人程度の子どもと同数程度の大人がいる。

 この公園は、ニューヨーク市公園レクリエーション局が推進している別ウィンドウで開きます「イマジネーション・ プレイグラウンド」のフラッグシップとなるもので、ロックウェルグループによって開発さ れた、同じイマジネーション・プレイグラウンドと名づけられた遊具が用意されています。数種類の形の青いウレタンフォームのユニットを自由に並べたり積み上げたりして子どもたちが想像力を働かせながら遊べるシステム遊具で、収納コンテナからこの遊具を取り出した途端、そこが子どもたちの自由なイマジネーションと創造力を発揮する場となるしかけです。ブランコや滑り台といった遊び方が決まっている典型的な遊具とは違った、公園における創造性を育む遊具の新たな潮流を感じさせます。
 また、この公園にはプレイスタッフと呼ばれる遊びのサポーターが居り、遊びのファシリ テーターとして、子どもたちに創造的な遊びを促したり、片付けや監視などをしています。 視察した日も、何をして遊んだらいいのかわからないでいる子どもに、ウレタンフォームでレールを組み立ててボールを転がすなどの遊びのきっかけ与えたり、うまくいくと子どもと一緒に喜んだりということを要所で行っていました。よちよち歩きの幼児から、小学生ぐらいまでの幅広い年齢の子どもたちが、思い思いの遊び方で嬉々として遊んでいる姿はとても 印象的でした。

 ロックウェルグループにとっては、この公園は製品のショウルームともなっており、公園のデザインを無償で行い、管理に関する費用も寄付しています。ビジネスと利用者、行政の要求がうまく繋がり、良質の公園や遊具とその維持が少ない負担で実現できています。

 イマジネーション・プレイグラウンドを外から見た写真2枚。1枚は、高さ2メートル程度の空中通路の下にぶら下げられたネット上のロープや帆布の遊具。もう1枚は、出入口の鉄格子ドア。出てきた女性がドアを閉めている。

 ニューヨークの公園では一般的なことですが、この公園も全体が柵で囲まれ、入口には格 子の扉が付いています。ここでは子ども連れでない大人が入ることも禁止されています。安全が確保された中で、周到にデザインされた施設と遊具で子どもたちが創造力を発揮できる 心地よい空間。キーワードは、創造性、良質な運営、ビジネスモデル、そしてアクセシビリティです。
 この公園が示唆するのは、遊びの創造性に対するアプローチとアクセシビリティの関係です。創造性の高い遊びとしては、自然の野山を駆け回ることが挙げられますが、自然の中で は十分なアクセシビリティが確保できず、排除される子どもが出てきます。そしてそこでの助け合いは、子どもたちを助ける側と助けられる側に分け、常に助けられる側に回りがちな障害児には弱者というレッテルを押し付けることになります。一方で、アクセシビリティは十分でも、従来の遊具ではその多くは遊び方が決まっており創造性からは遠退いてしまいがちです。この公園は、十分なアクセシビリティを確保した上で、従来の遊具とは異なる自由な遊び方ができる遊具によって創造性に対して大きなチャレンジをしており、都市公園の新たなあり方を示しています。




■アッサー・レビー・プレイグラウンド(Asser Levy Playground)

 この公園は、「コラムNo.03:ユニバーサルデザインの公園の価値」でも紹介しています。 1990年に施行されたADA に基づいて、1993 年にできた公園の18 年後の様子を再び見に行き ました。

複合遊具の全景写真。滑り台があり、梯子とスロープ、移乗デッキがある。
 遊具の塗装の色は褪せてはいるものの、きちんと保守管理されたアクセシブルな遊具は健在でした。この公園のアクセシビリティの特徴には、次のようなものがあります。何れも18年前に作られた機能です。

  • 昇る方法が能力に合わせて階段、スロープ、移乗用デッキの3つから選べる複合遊具。
  • 複合遊具の色は弱視の子どもにも判別しやすく、○×のパネルは聴覚障害児も遠隔コミュニケーションが楽しめる。
  • 車いすでもアクセスしやすいテーブル。ベンチの無いところが車いすやベビーカーの席に。
  • ブランコは、体がすっぽり入って落ちないタイプと、ベルトで固定できるシートタイプ(18 年前は手で漕ぐタイプであったものが取り替えられている)。
  • 砂場の淵は、遊ぶ子どもを見守る親のベンチになると同時に、姿勢を保持するのが困難な子どもの背もたれに。
  • 地面に埋め込まれた海の生き物のレリーフは、視覚障害児も触って遊べると同時に複合遊具に導く誘導ブロックに。
  • 複合遊具やブランコの下の地面は、安全なゴムシート敷き。
公園施設の写真3枚。複合遊具は床面が木製で、鉄製の手すりや柱は赤、青、黄のカラフルな配色。○、×、無しが表示できる3×3配置の9個の回転ユニットのあるプレイパネル。四葉のクローバー形のテーブルが3台。ベンチが両側にある1台と片側だけの2台。

公園施設の写真3枚。体のすっぽり入るブランコ4つとプラスチック製のシート型ブランコ1つが一列に並ぶ。円形の砂場の淵は、幅30センチ、高さ40センチ程度のコンクリート製。アスファルトの地面に直径30センチ程度の円形レリーフが30個程度埋め込まれ、複合遊具まで線状に配置されている。レリーフにはヒトデ、カニ、巻貝、魚などが刻まれている。

 この公園も前述の別ウィンドウで開きますニューヨーク市公園レクリエーション局の管轄にあるものですが、同局のWeb ページには、公園のアクセシビリティの度合いが4段階のレベルで示されています。 各レベルの定義であるアクセシブル・プレイグラウンド・ディフィニションズは以下のようになっています。

レベル1:すべての子どもたちが遊べる公園
レベル2:スロープ付きの遊具と誰もがアクセスできるブランコのある公園
レベル3:誰もがアクセスできるブランコのある公園
レベル4:移乗できるデッキの付いた遊具や地面の高さで遊べる遊具のある公園

 この公園のアクセシビリティはレベル2とのことです。ニューヨークの全ての公園がレベル1や2になっているわけではなく、3や4もまだまだ多くあります。これはADAの規定が、新たな公園を作る場合や改造する場合にのみ適用されるためで、既存の公園をすぐにアクセシブルにすることを求めてはいません。しかしながら、22年も前にこのような法律を作ったことで、時間はかかりながらも少しずつ公園が、そして社会全体がアクセシブルになってきているのです。アメリカではここまで変わるのに法律を作ってさらに22年もかかっているわけですが、日本では、残念ながら遊び場の遊具に関して、アクセシブルにしなければならな いと定めた法律はまだありません。

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