UD公園のヒント<海外編>
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「UD公園のヒント・海外編No.04」
公園訪問inカリフォルニア(前編)
~アメリカ・シェーンズ インスピレーションより~

 “Shane’s Inspiration™”(シェーンズ インスピレーション)は、アメリカのカリフォルニア州を拠点に、米国内外で誰もが利用できる公園をつくる支援活動をしているNPOです。このNPOは公園づくり以外に、できあがった公園を利用した各種の企画を行ない、多様な子どもたちの交流や相互理解の促進にも積極的に取り組んでいます。(参照別ウィンドウで開きますhttp://www.shanesinspiration.org/ なおShane’s Inspirationのビデオ”Where I Feel Like Me”は当サイトで別ウィンドウで開きます日本語訳を掲載させて頂いています。別ウィンドウで開きます「こぼれ話:つくれば、やって来る(後編) 」もどうぞご覧下さい。)

 今年(2007年)の夏、ロサンゼルスで「シェーンズ インスピレーション」が手掛けた公園の中から異なる特徴を持つ4箇所を訪れ、月に一度開かれるプレイイベント“Shane’s Club(シェーンズクラブ)”も見学してきました。そこには新しい発見と、たくさんの子どもたちの笑顔がありました!

 「『工夫次第で、多様な子どもたちが一緒に遊べる公園は実現できるんだ』ということを、日本のいろいろな人たちに知ってほしい」という私たちに対し、NPOスタッフのマーニーさんは「ぜひこの公園をみんなに紹介して! 私たちの願いは、こうした誰もが利用できる公園が世界中に広がっていくことだから」と笑顔で答えてくれました。  

 今回の「公園訪問in カリフォルニア(前編)」では、ロサンゼルス市を代表する公園Griffith Park(グリフィスパーク)の一角に2000年の秋に誕生した、このNPOにとって第1号の公園「シェーンズ インスピレーション」をご紹介します。

写真:公園入り口の看板ゲート
 公園の入り口です。看板の「シェーンズ インスピレーション」のロゴの下には、”UNIVERSALLY ACCESSIBLE PLAYGROUND -誰もが利用できる遊び場-”と書かれています。

マーニーさん:「ここの土地はロサンゼルス市に掛け合って提供してもらったの。今ではグリフィスパークの中にこの遊び場があることを、市は誇りにしているのよ。自治体としてもすごくいいPRになるから」
写真:2つ並んだシート型ブランコ 
 背もたれつきのシート型ブランコが二つ並んでいます。二つのブランコは向かい合うように逆方向を向いて取り付けられていますね。兄弟や友だちと一緒に乗れば、お互いの笑顔が見えて、ブランコがさらに楽しくなりそうです。
写真:時計の絵が描かれたプレイパネル 写真:アルファベットが書かれたプレイパネル 
 複合遊具にある2種類のプレイパネルです。一方には時計の絵(時計の針は自由に動かせます)、もう一方にはアルファベットの文字が、触っても分かるように彫り込まれています。
 またどちらのパネルにも細長い金属のプレートが付いていますが、そこにはそれぞれの数字や文字に対応する点字が表記されています。誰もが幼い時から、遊びの中で点字に親しむことができます。
写真:砂場の中にある複合遊具 いろいろな砂遊びの仕掛けがあるプレイデッキ
 広い砂場の中央に、車いすのままアクセスできる低い複合遊具が設置されていました。これはいくつかの島(プレイデッキ)をスロープや橋でつないだような形で、デッキのあちこちに、砂をためて遊ぶテーブルや穴から落として遊ぶしかけなどがあります。
 デッキの床はすべて砂場とほとんど変わらない高さで作られ、子どもがデッキと砂場を行き来したり、砂をやり取りしたりできるポイントが豊富にあるので、車いすに乗っている子どもも友だちと関わりながら一緒に砂遊びを楽しめます。
写真:ボールをゴールに投げ入れて遊ぶ子ども
 こちらの平坦な円形スペースでは、真ん中に高さ2メートルほどのポールが1本立っていますね。ポールの上には大きな漏斗のような形のゴールがあり、その下に3つの筒が外向きに付いていました。周りから子どもがこのゴールに向かってボールを投げ入れる様子は、運動会の玉入れにも似ています。ただし投げ入れたボールは、漏斗の下にある筒を通って地面に落ちてきます。しかも、3つの方向を向いたどの筒から落ちてくるか、まったく予想がつきません!
 
 一人で遊ぶ子どもは、思わぬ方向に吐き出されるボールを追いかけては、また投げ入れることを繰り返しています。いい運動になりますが、長時間遊ぶにはあまり向いていません。そこで誰かを誘いたくなります。3人いれば、みんなでボールの出口を分担して楽しむこともできますよね。

 車いすでも快適に走り回れる地面、上手・下手にかかわらずほぼ平等に回ってくるチャンス、たとえ初めて出会った相手とも、すぐに一緒に遊べる遊具・・・ここにもユニバーサルデザイン(UD)の理念が感じられませんか?
写真:小さなステージと客席のベンチ
 写真の奥に写っているのはささやかな屋外ステージです。少し高くなった四角い舞台を回り込むような形でスロープが付いていますね。これで車いすもベビーカーも、重いスピーカーを載せた台車もスムーズに舞台に上がれます。
 
 さて突然ですがここで問題です!
 ステージの手前(客席)に並んでいるベンチをご覧下さい。舞台の横幅と比べるとずいぶん短いベンチばかりが、1列目は右寄り、2列目は左寄り、と互い違いに置かれています。なぜでしょう?(答えはレポートの最後に)
 写真:工作コーナーに集まる子どもたち 写真:フェイスペイントをしてもらう車いすの男の子
 さあ、いよいよ、月に1度のイベント「シェーンズクラブ」が始まりました。
 様々な障害がある子どもやない子ども、その親たちが公園に集まって思い思いに遊びます。遊び場の傍らでは、ボランティアによる簡単な工作コーナーやフェイスペインティングコーナーが設けられ、どちらも子どもたちに大人気です。
  
マーニーさん:「じつはこの公園ができた当初、障害児の利用は予想より少なかったの。それは障害をもつ子どもを連れ出すことに対して、保護者がまだいろいろな抵抗感を持っているケースがあったから。そこでまず、あらゆる人に気軽に公園へ来てもらうためにこのイベントを開くことにしたの。今では平均百人以上が訪れるのよ。この公園は、子どもにとっても親にとっても、外の世界に一歩踏み出して心から楽しんだり、新しい友だちを作ったりするきっかけの場になっているの」
写真:駐車場にとめられた黄色いスクールバス
 公園の隣を見ると広い駐車場があり、そこに1台のバスが停まっています。

マーニーさん:「誰もが利用できるこの公園は、障害をもつ子どもやその親たちにすごく好評で、中には車で2時間かけてやってくる家族もいるの! でも適当な交通手段が無いために来たくても来られない人たちもいる。だからイベントの日は、事前に予約をすると無料でバス送迎をするサービスも行っているのよ」
写真:複合遊具で車いすをこぐコール君
  別ウィンドウで開きますNPOのビデオの主役コール君のお母さん:「コールが小さい頃、あの子が遊べる公園は一つもなかったわ。実際、近所の公園に連れて行って何とか遊べないかとやってみたのよ。だけど車いすのままはもちろん、私が抱きかかえて遊ばせるにもやっぱり無理があった。それで私はコールを公園に連れて行くことをあきらめてしまったの。でもこの公園を作ったことで状況は一変した。彼は自分の力でいきいきと遊べるようになったの!
 ここはほんとに素晴らしいでしょ?車いすの子どもにとってアクセシブルであるだけでなく、他の子どもにとっても様々な感覚刺激を得られる優れた遊具がたくさんある。こうした公園がもっと増えてほしいわ」

 イベントに参加している子どもは、年齢も、人種も、障害も、じつに様々です。
 それぞれの子どもが思い思いに遊び、小さな触れ合いがあちこちで自然発生します。
写真:足に装具をつけ歩行器で歩く小さな女の子
歩行器で一歩ずつ歩く女の子


写真:複合遊具のスロープを駆け上がる子どもたち
「あっち、行ってみようよ!」
友だちの車いすを押して
スロープを行く男の子
    
 
写真:プレイパネルで遊ぶ女の子と母と兄
プレイパネルを回して遊ぶ
バギーに乗った女の子

写真:吊り輪にぶら下がって頭上のレールをスライドする遊具のスタート地点にいる子どもたち
「これがほしいの?」
ダウン症の男の子に遊具を渡す男の子
    
 

写真:コール君たちと、彼の介助犬黒いラブラドールに手を伸ばす小さな男の子
 「『介助犬』っていうんだ」犬に興味津々の男の子に声をかけるコール君
写真:ステージの周りに集まり拍手をしているたくさんの人々
 たっぷり遊んだイベントの最後はみんなでステージの周りに集まり、今日楽しかったことや今月身近に起こった素敵なニュースなどを発表し合います。(すぐにスペイン語で通訳されます。)そして協力してくれたボランティアの人たちにも温かい拍手が送られます。

 ここで先ほどの問題を思い出してみましょう。

問い「客席に、短いベンチが互い違いに置かれているのはなぜ?」

 最前列をご覧下さい。右寄りのベンチに腰掛けている人たちの隣のスペースには、バギーの女の子や、車いすのコール君や、コール君の介助犬が並んで座っていますね。もしも舞台の幅と同じ長さのベンチが置かれていたら、彼らは列の前や横に押し出されてしまうわけですが、短いベンチによる空きスペースのおかげでしっくりと納まっています。
 また、女の子やコール君のすぐ後ろ、左寄りに置かれた2列目のベンチには、それぞれのお母さんたちが座っています。後ろから子どもに声をかけたり、飲み物を渡したりするのに、好都合なポジションのようです。
「いきなり前の方はちょっと…」とか「今日は後ろに座りたい!」という車いすの子どももいるでしょう。このベンチの配置は、そんなニーズにも対応できます。すべての列でベンチの隣に車いすやベビーカーの子どもが並んでいるわけではありませんが、それはそれで適度なゆとりスペースとなっていました。

答え「個人にとっても、みんなにとっても、何だかいい感じで座れるから!」  

 うーん。あまり明快な答えではないですね・・・。
 でも、もし全部が長いベンチだったら?    
 もし短いベンチがすべて右側だけに置かれていたら?    
 もし前の2列分が車いす専用の空きスペースで、後ろだけにベンチが並んでいたら?  
 こんな「いい感じ」にはならないはずです。

 肌の色も、話す言葉も、年代も、障害種別も異なる様々な人たちが集い、 舞台の上、客席、さらにステージの周りの芝生や木陰からも笑顔で拍手を送り合っている。 NPO「シェーンズ インスピレーション」の目指す世界のミニチュア版が、このステージの周りにできあがっています。

 そして互い違いに置かれた短いベンチが、この世界を演出するための、ささやかだけど大切な役割を果たしていることは確かです。

 次回は、このNPOが手掛けた他の公園の様子をご紹介します。お楽しみに。

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