こぼれ話
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壁が消える場所 (後編)

 カリフォルニアのNPO「シェーンズインスピレーション」の行う「学校教育プログラム」(■コラム「壁が消える場所(前編)」をご覧ください)は子どものための企画ですが、大人の方が思いがけないことに気づかされるケースもあるそうです。
 同NPOのシニアディレクター、ブラッドさんからこんなエピソードをうかがいました。


 それは、自分では話すことができず、「こんにちは」「はい」「ありがとう」などいくつかの言葉が入力されたトーキングエイドという機器のボタンを選んで押すことで意思の疎通をはかっている重度の障害をもつ男の子の話です。

 プログラムに参加した彼はシェーンズの公園で、一般の学校からやって来た2人の女の子と組んで遊び始めたのですが、しばらくして担任の先生が見つけたのは、遊び場の片隅で頭を寄せ合いじっとしている3人の姿でした。そっと近付いてのぞいてみると、男の子がトーキングエイドを懸命に操作し、彼女たちとの会話に都合のよいよう、新しい言葉を入力し直しているところでした。

 先生はあわててその場を離れ、すぐさま携帯電話をかけたそうです。「お母さん、本当よ!信じられるっ?!」 小躍りするほどの興奮ぶりにスタッフの方が事情を聞くと、男の子が自分で機器に言葉を入力するのは初めて! しかも、今まで誰ひとりその操作手順を教えたことがないということでした。先生もお母さんも、彼にそんな力があるとは思いもかけなかったのです。

 『この子の力はここまで』 『ここから先は大人の助けが必要』
 もっとも身近な大人たちに見えていた「限界」という壁――
 しかし気づけば当の本人は、出会ったばかりの友だちをつれて「壁」の向こう側に立っているいではありませんか。

 「大人の思い込みが子どもの可能性を閉ざしていることもあるんだね。それに子どもには、『子どもどうし』という同じ立場で遊んでこそ発揮される特別な力があると思うんだよ」
 穏やかな口調で語るブラッドさんのお話は続きます。「私のお気に入りのエピソードはほかにもあってね・・・」
 その公園では、こうした嬉しい“事件”がいくつも起こるのです。



 子どもはだれかといっしょに遊ぶことで様々な力を発揮し、
 少しずつ、時に劇的に、お互いの可能性を広げていきます。
 昨日までの「限界の壁」を超えて・・・

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