コラム
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「コラムNo.22:ユニバーサルデザインの遊び場とリスクテイク」
みーんなの公園プロジェクト
矢藤洋子


 「障害のある子どもも遊べるユニバーサルデザインの公園」と聞くと、簡単な遊具にやたらとスロープや手すりがある超安全で退屈な遊び場を想像される方が少なくありません。そこには、「障害児」はか弱く特別な存在で、少しのけがもないよう親や周りの大人から手厚い保護を受けている印象が影響しているようです。

 障害のある子どものお母さんやお父さんたちにインタビューをすると、「多少のすり傷やけがは構わない。本当は他の子どもと同じように外でのびのびと遊んでほしい」という声を聞きます。忘れられがちなのは、障害のある子どもの親は同時に障害のない子ども(障害児のきょうだい)の親でもあるケースが少なくない点です。アクセシブルな環境さえ整っていれば屋外での遊びやレジャーを活発に楽しみたい家族もおり、「障害児の親=過保護」という決めつけは禁物です。

 一方で、障害のある子どもをなるべく外に出さず自宅や通所施設などの慣れた安全な場所で過ごすことを選ぶ家庭もあります。体の状態により屋外での活動が困難な場合もありますが、以前、一般の公園で外遊びをさせていて不便で危険な事態に遭遇した人、また自分たちでは平気だとわかっていても居合わせた周囲の人から「障害のある子にそんな遊びをさせるなんて危ない」「かわいそう」と言われることが苦痛で公園を避けるようになった人もいます。

 こうした現状は障害のある子どもにとって、幼少期に様々な遊び体験を通して挑戦と失敗を繰り返すリスクテイクから学ぶ機会を得にくいという不利益につながります。自宅、病院、障害児施設、特別支援学校といったバリアフリーで安全な環境が日常で育った子どもは、街や一般の公園に出かけた際、ついいつもの感覚で行動していて思わぬ事故にあってしまうことがあります。限られた経験では、健常者向けに整備された環境に潜むリスクに気づきにくいためです。

 安全第一の行きすぎは、かえって子どものためにならないのではないか?
 近年、イギリスやオーストラリアなどで一般の公園や学校の遊び場にも敢えてリスクを取り入れることの重要性が指摘され、遊び場のガイドラインや指針への反映が進みつつあり、こうした動きはアメリカの有力紙でも取り上げられています。
 その背景には、子どもの安全を重視するあまり幼児向けの簡単な遊具セットを置き(Kit)、周りを小さなフェンスで囲い(Fence)、平坦な地面いっぱいにゴムチップ舗装を敷き詰めた(Carpet)ような公園が増えたことで遊びが貧困になり、子どもたちが持てる能力を存分に発揮したり危険を探知しうまく対処したりするスキルを習得できなくなっていることへの危機感があります。(これらの遊び場は、有名なチキンのファストフード店になぞらえて”KFC”プレイグラウンドとも呼ばれるとか)

 かといって遊び場へやみくもに危険要素を持ち込めばよいわけではありません。「遊び場を安全に」という流れは、従来型の公園で子どもが命を落としたり深刻なけがを負ったりする事故が続いたことへの反省から起こったもので、単に「昔の方が良かった」という話ではないのです。

 遊び場にあるべき適切なリスクとしては、「子どもが危険を予測しやすい」、「失敗しても大きなけがにつながらずもう一度挑戦できる」、「自分に合ったリスクを選択できるよう段階的な挑戦レベルがある」、「外の世界で応用しやすいよう多様性がある」などが考えられるでしょう。
 加えてユニバーサルデザインの公園には特有の留意点もあります。複合遊具にスロープを設けることで幼児も不適切な高さのデッキまでアクセスし得る事態にどう対処するのか、スロープを下ってきた車いすユーザーの前を他の子どもが横切ることで起き得る衝突事故をどう減らすのか――世界はいろいろな知恵を絞りながら「アクセシビリティ」と「安全性」と「健全なリスク」のバランスを探り続けています。

 障害のある子どもや家族が望んでいるのは、決して安全一辺倒の退屈な公園をあてがわれることではありません。すべての子どもが歓迎されドキドキワクワクしながら自らに挑戦できる、発見と学びと楽しさに満ちたユニバーサルデザインの公園を実現するためのアプローチはまだまだあるはずです。

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