コラム
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「コラムNo.19:ユニバーサルデザイン・ワークショップから」
倉敷芸術科学大学芸術学部
柳田宏治

 

 以前の「■コラムNo.16:ユニバーサルデザインの公園づくりの手法」では、ユニバーサルデザインの実践手法を2つご紹介しました。その一つ「UDマトリックス」を使用したユニバーサルデザイン・ワークショップを行いましたのでご紹介します。公園づくりをテーマにしたものではありませんでしたが、ユニバーサルデザインの取り組み方に対する貴重な示唆がありました。

 ワークショップは、地域の自治体職員の方々を対象にしたものでした。参加者の多くは、他の様々な研修などを通してユニバーサルデザインについては十分理解されていました。そこで、ワークショップの目標を、参加者それぞれの業務の中でユニバーサルデザインを実践できるようになるということに置きました。5名程度のグループごとに身近な行政サービスの業務を取り挙げ、「UDマトリックス」を用いてユニバーサルデザインの視点から問題を見つけ、改善の切り口を考えるというものです。「受付業務」や「税金の相談コーナー」、「HPによる講演会案内」などさまざまな業務が検討されることになりました。


 UDマトリックスは、多様なニーズを持つユーザーとタスク(作業の流れ)とのマトリックスでユニバーサルデザインの問題抽出やアイデア創出を行う手法です。この作業を通じて、各グループからいくつもの具体的なアイデアが出されただけでなく、実際に自身の業務でユニバーサルデザインを実践するためには何が必要かという貴重なディスカッションにも発展しました。そしてワークショップ後には、「ユニバーサルデザインを実現するための具体的な方法が初めてわかった。これですぐに取り組める」という意欲的な声が多く聞かれたのです。

 ユニバーサルデザインのことをわかっているという方々でも、実際の業務の中で実践できていない場合が少なくありません。実践のための「手法」を手に入れることが、「知っているから実践する」へとユニバーサルデザインの取り組みを推し進める鍵だと実感したワークショップでした。


 米国で生まれたユニバーサルデザインという考え方は、2000年頃から日本でも取り組みが盛んになってきました。その後、さまざまな分野で事例が発表され進化も見られましたが、まだ限られた範囲だけにとどまっているようにも感じられます。そうした停滞があるとしたら、「実践のための手法」について改めて見直してみることで、ユニバーサルデザインの進展速度とその質は大きく変わるかもしれません。

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